実は先日、知り合いの方からBMW M3 E36のショック交換とセッティングを依頼された。
ノーマルのサスペンションでは、高速コーナーはそこそこ楽しめても、中低速コ−ナーでは変な挙動が出てアクセルを踏めないそうだ。
当初、BMWにあまり魅力を感じなかったし、ノウハウもないので断っていたのだが、あまりに熱心なので箱根で試乗させてもらうことにした。
言われる通り、確かに高速コーナーは楽しめるのだが、中低速コーナーではフロントのつっぱり感が出てアンダーぎみ、それでも踏んでいくとリアがブレイクしてオーバーになるといった感じだ。
エンジンは3200ccで出力は321PSもあり、7000rpmまで気持ちよく回る。
これでサスペンションさえ決まれば驚くほど速く走れそうだ。
そうなると、なんとかしたくなるのが人情!
クアンタムを使うという条件で受けることにした。
QRSへのリクエストは、ワインディングメインだが買い物やゴルフにもいけるという贅沢な設定。
結果、減衰力調整式のT5-RM STAGE3に、スプリングはハイパコでフロント11kg/mm、リア15kg/mmとなった。
まずは通常に組み付け、車高は約40mmダウン、フロントキャンバー−2°30′
リアキャンバー−2°00′でテスト走行してみることにした。
結果はフロントバンパーとフェンダーの繋ぎ目にクリアランスがなくなってしまいタイヤが接触してしまうのである。
またコーナリング中にギャップにのると、予想以上にフロントがインに巻き込むような挙動が出る。
満足できない結果となってしまった。
これはどう考えてもキャスターが立ちすぎているとしか思えない。
ところがE36は、キャンバーもキャスターもショックアブソーバー付け根やロアアームで調整することができないのである。
固定式のためアッパーマウントでしか調整できないのである。
そこでいろいろ調べた結果、ポルシェでは考えられない方法がわかった。
アッパーマウントを回転させることによって、キャスターを寝かせる側へ動かせるようにするそうだ。
そうすると今度はキャンバーがあまりつかなくなるため、走り方やハンドリングの好みに応じてどちらを優先するのか決めるのである。
この発想には本当に驚いてしまった。
結局アッパーマウントを45°回転させて付け直すことにした。
するとフロントバンパーとフェンダーの繋ぎ目のクリアランスが5mmほど大きくなったが、キャンバーはいっぱいまで寝かせても−1°42°くらいしかつかなくなった。
早速走ってみたのだが、前回よりもあきらかにステアリングのレスポンスがマイルドになり、コーナーリング時にギャップにのった時に起きていた巻き込みも感じなくなった。
またタイヤとフェンダーの接触もなくなった。
この激変ぶりは驚きである。
好みの分かれるところだが、ピーキーでクイックなハンドリングを求めるのなら、キャンバー優先、マイルドな動きと直進安定性を求めるならキャスター優先で取り付け方法を決めるしかない。
サスペンションの設計はメーカーによってそれぞれ・・・
少し苦労したが、とりあえずは納得できるサスペンションを作ることができた。
満足である。
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1997年式 BMW M3
エンジンは直6の3200ccで出力は321PSもあり、7000rpmまで気持ちよく回る。
これでサスペンションさえ決まれば驚くほど速く走れそうだ。
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車高はフロント約40mm リア約30mmダウン
ノーマルに比べるとかなり低くなった。
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キャンバーもキャスターもアッパーマウントでしか調整できないため、その取り付け位置を回転させることによって、キャンバーを優先するのかキャスターを優先するのか、走り方やハンドリングの好みによって決めるしかない。
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ダンパーはクアンタム T5-RM STAGE3
スプリングはハイパコでフロント11kg/mm リア15kg/mm
キャンバーはフロント−1°42′ リア−2°00
トーはサイドスリップでフロント0mm リア4.0mm
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